飯豊山

日本百名山

飯豊山

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【稜線1】



【稜線2】



 この時点でこの日の宿泊予定である本山小屋まで行くのはあきらめかけていた。なにしろ暑い。そして眠くもなってきた。最後の力を振り絞ってザックを背負い三国岳目指して一歩一歩登っていった。

【三国岳〜切合小屋】
 三国岳は標高1644M、山頂には三国小屋がある。大日岳や飯豊山への稜線の眺めがよい。ここに着いたときは疲労困憊、足の筋肉もひきつり気味であった。小屋の横の草むらにどっかと腰を下ろし、遅い昼食をとる。そしてしばしの睡眠をとる。ぎらぎらと照りつける太陽が気になるが、体力と足の回復をはかる。
 三国岳から切合小屋までは途中種蒔山を巻いていく。登ったり下ったりの稜線を進んでいくが、途中先ほど常磐西線で見かけた4人衆が休憩しているところに出くわした。彼らも私を覚えていたらしく、その場で話し込む。そこへ山都からのタクシーで私の横に座った若者がその場を通過。のちの切合小屋ではこの6人で飲み交わすことになる。

【切合小屋】



 16:40、時間的には予定通り切合小屋へ到着。小屋の目の前には引いてきた水場がある。素泊まり料金は\2000-、唯一ビールだけは売っており、驚きの価格\800-を支払って一気に飲み干す。
 明るいうちに夕食を終えるべく小屋の前にある長椅子で調理を始める。日が低くなるとようやく気温も下がってきて涼しくなってきた。私の隣では小屋で注文した食事を食べていた。メニューはカレーライス、ここでは食事も作ってくれるらしい。
 食事を終え、2階の寝床に戻ると先ほどの4人衆が食事をとっていた。私と違ってかなり豪華でな夕食である。ごそごそと荷物整理をしていると彼らに呼ばれ私も仲間に入れてもらい、飲め飲めとポリタンクのウイスキーをどぼどぼと注がれる。そして食え食えと自家製無農薬キャベツやにんにく丸ごと、チーズ等をもらい相伴にあずかる。
 小屋の込み具合であるが2階はいっぱいになったものの、1階はがらがらであった。消灯になってから、私と他2名は1階に寝に行った。広々として大の字で寝られる。しかしシュラフなのでミイラ状にならなくてはならない。
 夜中に暑くなって目が覚める。シュラフは冬用のダウンシュラフを持っていっていたのであるが、とんでもない失敗であった。シュラフカバーだけでも十分耐えられる気温なのである。今年が特に暑いのか、飯豊山がそもそも温度が低くならないのか、星空をながめながら夜風にあたり立ち小便をする。

7/29(金)【切合小屋〜飯豊本山】
 起床は3:30、ランタンの下で朝食を取っているうちに明るくなってきた。パッキングを終え飯豊本山目指して歩き始めた頃にちょうど日の出が始まった。オレンジ色の太陽が雲海の上に顔を出し荘厳な感じである。自分の影が背後にどこまでも続く。
 朝は元気があり、太陽光も弱いので快適に歩き進む。植物も多くあらわれ、チングルマ、ミヤマキンバイ、ニッコウキスゲ、など至る所に群生している。本山小屋の手前に水場があり、ここでもザックを置いて下っていき、喉をうるおす。

【切合小屋方面を振り返る】



 本山小屋の目の前には飯豊山神社があり、6:30という早朝にも関わらず中には神主がいて、お守りなどを売っている。私は賽銭箱に賽銭をいれ、お参りをするが、山中の神社で願うことはいつも無事下山できることである。ここまで来て俗世のくだらない願いを祈願する人はまずいないであろうと思う。
 飯豊山神社から10分あまりも歩くと飯豊本山である。この日ばかりは山頂に立っても達成感はなかった。飯豊山は本山山頂に立つことが目的ではない。縦走して下山して初めて飯豊山を征服したと感じるのである。現にまだ御西岳、烏帽子岳、北股岳とピークは控えている。山頂からはかなたに御西小屋が見える。

【飯豊本山〜梅花皮(かいらぎ)小屋】
 左右に次々とあらわれる花々や山の風景を楽しみつつも喘ぎながら御西を目指す。  7:45、予定通り御西小屋に到着。近くに水場があるらしいが、ここでは気が付かなかった。既に太陽光が厳しくなってきており、小屋の影で休息をとる。ここは飯豊山最高峰の大日岳方面と北股岳方面との分岐であるが今回、大日岳へは寄らずに北股岳方面へ直接向かう。

【お花畑】



 御西小屋から次の目標は融雪水の水場である。1時間あまりの道のりであるが、太陽光を遮るものはなにもなく、猛暑の中汗だくになりながら、なかなか足が進まない。さながらアラビアのロレンスである。彼はラクダに乗っている分楽でいいが、こちとら20KGあまりをかついで自ら歩いている。

【融雪の水場】



 オアシスである融雪水の水場では水筒で頭に水をかける。腕や手足にも水をかけ、火照った体を冷却する。融雪水は冷たくてうまいが、洗練されたわき水と違ってどこか埃っぽい。
このあたり、もう写真を撮る気力・体力もなく、とにかく少しづつ歩きつづけ、烏帽子岳を登り切る。北股岳がはるかかなたに見えるがその手前に梅花皮小屋があるはずだ。ここからは見えない。
 梅花皮小屋への最後の登りである梅花皮岳を登り切ると、赤い屋根の小屋が眼下に見えてくる。まさに最後の力を振り絞って急坂を下っていく。はうようにして梅花皮小屋に着いたのは12:00、この日は平の湯温泉まで下るつもりでこの時間を達成したのであるが、小屋で体力の回復を待っていたら、あと6時間かかる平の湯につくのは夜になってしまう。あきらめて小屋に泊まることにする。しばらく小屋の中で横になっていて、食事を作る体力を回復したので、50M先の水場へ水を汲みに行く。ここの水場は水量がふんだんにある。再び頭から水をかぶり、最高に気持ちがよい。
 昼食はそうめん。最高の水でつくるそうめんは最高の味である。
 昼食を終え、寝転がっていると今日の宿泊客が次々と集まってくる。昨日の4人衆や若者も梅花皮泊であると聞いていたが、やがて到着する。

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