日本百名山釜ノ沢・東俣・甲武信岳 |
二度目の甲武信岳登頂は、東沢からのルートとなった。沢屋にとっては山頂に立つことが目的ではなく、沢を登ること自体が目的となるので、甲武信岳に登ることはどうでもいいようだ。甲武信岳に行くとは言わず、東沢に行くと言うことになる。まだ沢初心者の私としては、どの沢に行くかと言うより、その先にどの山頂があるのかが気になるところである。
いつもの様に横浜の自宅を出発し、橋本駅(7:10)で仲間を2人ピックアップ。相模湖ICから高速に乗り勝沼ICで下りる。西沢渓谷の無料駐車場に着いたのは、9:30近くであった。中部の勝野さんが待っていた。駐車場は半分ほど埋まっていたが、まだ空きは十分にあった。駐車場の真上には雁坂トンネルに続く西沢大橋が架かっている。 今回は沢の途中で一泊する。4人が各自ツェルトを装備に加え出発。遊歩道をしばらく歩く。右手に休業中の西沢山荘、そして田部重治の文学碑を見やり、吊り橋を渡る。この吊り橋に下を流れているのが東沢である。東沢は下流で西沢と合流して広瀬ダムに溜まり、その先は笛吹川となる。笛吹川は富士川と合流し、最後は駿河湾に注がれる。 【吊り橋】 橋の上からは右手に突堤が、左手にはエメラルドグリーンに輝く沢が見える。 吊り橋を渡ると、「東沢渓谷は入山禁止!」の大きな看板がある。遊歩道から離れ、その東沢の方へ入っていく。かつては一般ルートであったのか、沢に向かって道はできている。岩が転がる河原を歩いていくと沢に突き当たるので、そこで登山靴から沢靴へ履き替える。 浅い河原の沢の歩きやすそうな場所を選びながら右へ左へと何度も渡渉を繰り返す。いったん右岸の山の中に入り、山道に入る。眼下には最初の大きな滝である魚留の滝が見えてくる。 山道から沢に下りていくとホラ貝のゴルジュに出る。ホラ貝のゴルジュとは良くネーミングしたものだ。岩に囲まれたトンネルを沢が流れていて、その流れは結構早い。水深も深いため、そこは泳いで突破することになる。もちろん、山道でそこを巻いていく道もあるのだが、果敢にもそのゴルジュを泳いでいる若者がいた。ザックを浮き輪代わりにして、足をバタつかせながら進んでいる。カメラがなければ自分も飛び込んでみたいものだ。命の次に大切なカメラである、水は大敵である。 【泳いでます】 ホラの貝ゴルジュ。岩場の奥では勢いよく水が流れている。そこを突破するのは難しそうだ。我々は右手の山道で巻いた。 ホラの貝ゴルジュを巻くところからしばらく山道を歩く。小さな祠がある山の神を通過すると再び沢に出る。左に乙女の滝、右に東のナメ沢、左に西のナメ沢と沢の出合いを眺めながら通過し、さらに釜沢の出合で東沢と別れ右の釜ノ沢へ進む。 【縁を歩く】 東のナメ沢。滑ったら沢にどぼん。慎重に歩く。 【魚留の滝】 10m。釜ノ沢で最初の沢。左側のスラブ上の壁を登る。14:35 魚留の滝を越えると千畳のナメになる。一枚岩のナメで浅く広く沢が流れている。それがしばらく続く。8mスラブ状の滝を通過すると単調な川原歩きとなる。 【千畳のナメ】 本当に千畳はあるかと思えるような一枚岩のナメである。14:48 【両門の滝】 20m。西俣と東俣が出合ったところがちょうど滝になっていて見事。滝の右側を巻く。15:46 【ヤゲンの滝】 15m。16:00 ゴーロが続く広河原で宿泊適地を探し、平らな広い場所があったので本日の行動は終了。早速ツェルトを立てて宿泊準備。空はまだ明るいが、樹林帯の中なので薄暗い。暗くなるのも早いだろう。 【ビバーク】 なぜかツェルトが4張り。なぜテントでなかったか未だに不明。ツェルトを買って10年ほど経つが、この時初めて使用した。16:58 【火遊び】 広河原のテン場適地は、すでに取り尽くされているのでたき火に適したマキが少ない。それでも捜索範囲を広げて何とか燃えそうなものをかき集め、しばしのたき火を楽しんだ。隣のテントではノコギリ持参らしく、太い倒木を切り刻んで盛大にたき火をしていた。 二日目は6時に出発。広河原を抜けて沢に入るが倒木が多い。小さな滝の連続で、沢の中を忠実に登っていく。 四段の滝 ミズシ沢出合 ポンプ小屋 【木賊沢を登る】 稜線までのツメはかなりの急登。ナメ、滝、ガレが続く。 【取水場】 ここまで来ると一安心。甲武信小屋の水場に到着。小屋まではポンプでくみ上げているようだ。パイプからも水が流れていたので、飲んでみると甘い味がした。 取水場で休んでいると、下から8人パーティーが登ってきた。彼らにスペースを譲るためにも我々は出発した。 稜線までの最後のひと登りで甲武信小屋に到着。小山の前では元気な犬が走り回っていた。小屋で飼っている犬のようで、客が出払ったので鎖から離したのだという。小屋番も一息ついたのか犬と戯れていた。小屋の奥には何台もの太陽電池パネルが並んでいた。山小屋は進化している。 甲武信小屋にザックを置き空身で甲武信岳に向かった。勝野さん、大山さんは山頂には興味がないらしく、Chifuさんと2人で行くことになった。 【甲武信岳頂上】 日本百名山甲武信岳頂上(2475m)。以前来たときに印象に残っていた百名山の巨大な木柱は健在であった。ケルンと木柱で4メートルほどの高さがある。 誰もいない甲武信岳山頂に到着する頃にはぱらぱらと雨が降り始めた。山頂からの眺望はほとんど見えず、山頂で記念写真を撮ってすぐに下山にかかった。小走りに下りながらも雨は徐々に強くなり、小屋まであとわずかというところで土砂降りになってきた。小屋に到着すると、小屋の前の屋根のあるテラスで待っていた仲間と10人ほどの後続隊が雨宿りをしていた。彼らの中に混じり30分ほど休んでいると雨はすっかり止んだので、このチャンスに下山することにした。 下山といってもまずは登りで始まる。甲武信小屋は木賊山の鞍部にあるため、そのピークを越えなければ下りにはならない。途中ザレ場で振り返ると、甲武信岳の山頂が三角錐の形に見えていた。 【木賊山頂上】 普通は読めない、とくさと読む。とくさとは多年生のシダだが、このあたりに自生しているのだろうか。木賊山(2468.6m) の頂上には三等三角点がある。点名は破風。 木賊山からは戸渡尾根の徳ちゃん新道を下る。この道は長く道標も全くないので、距離や時間の感覚が無くなってくる。今どのあたりを歩いていて、林道まであとどれくらい歩かなければならないのだろうか。時々登ってくる人とすれ違うが、よくぞこんな長く退屈な急な坂を登ってくるものだと感心する。 下山後の温泉は、以前乾徳山の後に入ったことがある笛吹の湯へ。空いている温泉という印象だったが、この日は子供達の林間学校(?)の集団入浴とちょうどかち合い、湯船はまさに芋の子を洗う状態だった。受付のおばさんに薦められた、道の駅の前にあるそば屋でほうとう(¥1050)を食べ、帰路につく。 帰りの中央道は大月以降は大渋滞。大月ICで下り、道志に迂回して車を進めると大雨が襲来。それも単なる夕立ではなく、2時間以上も降り続いた。仲間を橋本駅で降ろす際も、駅舎までのわずかな距離を車内で雨具に着替えてから移動する始末であった。
Camera:Panasonic DMC-FX9
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