失われた道、星穴岳


●失われた道、星穴岳〜脆い岩にかすかな踏跡を辿って

岩2
穴(星穴ではない)の下で

 ここからIX50の初撮影となる(いままではEOS kiss)。買ったばかりのカメラを、この過酷な星穴岳へ持って来たのは無謀だろうか。APSカメラの特徴の一つに、フィルムに撮影情報が記録されるということだ。例えば、上の写真は、
撮影時刻:13:17、焦点距離:105mm、絞り:4.5、シャッタースピード:1/180、レンズ解放値:5.6、といった情報がプリント裏面に印刷されている。

岩3
穴から這い上がる


 稜線に出るため、ルンゼ状のもろい岩を登っていく。星穴の岩は本当にもろく、掴んだ岩が簡単に剥げ落ちる。ビレーを取るのも灌木が頼りだ。トップのY氏がそのもろい岩を登って行く。岩影に消え、難儀していることがうかがえたが、突然氏が落ちてきた。5メートルくらい落下しただろうか。幸いにして落ち葉のクッションで停まって、怪我もなかったようだ。中間ビレーは役に立つに至らなかった。
 トップのビレー確保が終わって、僕が2番目に登ることになった。上からロープが確保されているので安心と言えば安心ではあるが、たった今トップが落ちた岩である、果たして登れるのであろうか。
 中間ビレーの位置までは、難なく到達できたものの、そこから傾斜がきつくなり登りにくくなる。岩が剥げ落ちないように、慎重に掴みながら縦穴に入り込む。次のビレーは環状になった岩に取り付けてあった。ここからは肘の圧力も使って、ようやくようやく穴から這い出ることができた。
 後続を待つ間、余裕ができたので写真を撮った。


岩5
急坂の落ち葉はすべる、岩ももろい


岩5
ザイルを使って竪穴から出てくる

 全員が縦穴から抜け出る難業を果たした時は、既に時計は14時を回っていた。ここまで5時間かかっている。そろそろ引き返さなくては、下山途中で闇になってしまう。
 ここが何処で、星穴のピークまで後どのくらいか、そもそもこのルートは正しいのか僕にはわからない。さらに岩を登って少し先に行ったY氏によると、この稜線自体はどうやら正しいルートであるようだ。
 やはり時間切れと言うことで、隊長のI氏の判断のもと、今来た道を戻ることになった。

岩トレ5
時間切れで撤退開始、今登ったばかりのコルを下降

14:32
岩5
18:34、中之岳神社に全員無事生還
すでに日は落ちていたが、ライトは点けずにすんだ

 残念ながら、今回は時間切れで敗退となった。本当なら星穴に降り立つことが目的であった。道も不明瞭で、安全を重視すればどうしても時間がかかる。入山を早めればもう少し時間を稼ぐことは可能だ。是非再びこの山に挑戦したいものだ。しかし、年々崩落が進む妙義の山である。できれば早めに再訪したいものだ。
 そしてこの山では、初めてザイルワークを実戦で経験した。前日の訓練で指導していただいた、Y氏、H氏、I氏に感謝したい。

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