中国見聞録シリーズ香港・新セン・マカオ放浪 |
【三日目-2】
マカオ行きの高速フェリーは全席指定となっている。渡されたチケットには手書きの座席番号とともに100元と印が押されている。国際線にしてはずいぶん安い金額だ。出航数分前に船内の乗り込みが開始され、行列が前に進んでいく。全席指定にもかかわらず乗客は先を争って船室内に殺到する。中国人は入るのも出るのも一番でなければ気が済まないのだろうか。そのような習性はDNAとしてすり込まれているとしか思えない。 入船の際に大きな荷物は船尾のデッキに置くことになるのだが、下の方に置いた荷物は良いものの、上に置かれた荷物は船の振動で海に放り出されそうな状態であった。上からネットをかぶせるのかとも思ったが、そのようなことはやっていなかった。時速80kmくらいで走るのだろうから、ちょっとしたうねりを越えると、荷物が放り出される可能性は十分に考えられるのである。 11:45定刻より少し遅れて出航。フェリーの座席は満席となっていた。マカオ(澳門)までは80分、料金は普通に払うと125$となる。フェリーのスピードが徐々に上がりだしたとき、おとなしく座ることができない韓国人が、荷物を置いてあるデッキに出ようとしたのか座席後部の扉をおもむろに開けた。するとそれを見ていた乗組員があわてて制止に入った。普通、高速で走っている乗り物で、窓を開けたり外に出てみようなどとは考えないものだが、彼らにはそんな感覚はないようだ。これが飛行機だったら、扉付近の乗客は、四五人ほど外に吸い出されて吹き飛んだことだろう。 ところが、そんな様子を見て数分後、乗務員がなにやら乗客に、追加料金で上の特別室に行かないかと言い回っている。料金は20ドルらしい。景色はビューティフルだし、写真も撮れるぞ、などと言っている。20ドルといったらたいした金額でもないし、じっと座っているよりましだったので、その料金を払って特別室とやらへ案内してもらった。 客室中央部分の階段を上ると、左手はすぐ運転室だった。中では四五人の男どもが談笑しながらあまり運転には集中していない。多数の乗客を預かっているという緊張感も全くない。右手はちょっとした小部屋で、これが展望室なのだろうか、テーブルを囲んだコの字型の椅子にすでにびっしりと人が座っている。そして正面は、なんと船外だった。一歩踏み出ると、ものすごい風が吹いている。船のスピードだけ風が吹くのは当然である。手すりに沿って後部に行くとデッキがあり、客室の壁のすぐ後ろが風よけになる。風よけにはなったが、真上にある太陽を遮るものはなく、その後しばらくここにいたため、日に焼けることになる。 ベンチが置いてあるので、そこに座って一息つく。デッキには三四人が出ていた。この特別室にやってきたのは、日本人と韓国人だけだったようだ。強風に耐えながら写真を撮ろうとするが、すでに新センの陸地は遠く、四方を海が取り囲むだけとなっていた。時々漁船や貨物船が行き交っている。次に写真を撮るチャンスは、マカオ入港直前のマカオの風景である。それまで1時間近くある。ここでいったん客室に戻ると、再び上がってくるのにまた20ドル取られるかもしれないので、猛暑の中我慢してそこに留まることにした。そのおかげで、顔がひどく日に焼けた。 【グランドリスボアとMGMグランドマカオ】 グランドリスボア(新葡京)、MGMグランドマカオ(美高梅金殿)はともには07年後半開業。今後開業予定のカジノホテルはフォーシーズンズ、シティーオブドリームス、ヴェネチアン・マカオ・リゾートホテル他11件と数多い。すでに世界一となっているマカオのカジノ収入。恐るべし。 マカオの島が近づき最初に目にはいるのがマカオタワーだ。東京タワーより少し高い、338メートルある。そして、海岸線に沿ったカラフルなビル群が見えてくる。まだ建設中のビルも多い。中でもひときわでかいのがグランドリスボアだ。マカオは昨年度の年間カジノ収入が70億$となりラスベガスを抜いている。にもかかわらず未だ多くのカジノホテルが建設中である。それだけ集客力が期待できると言うことなのだろう。 【マカオタワーとタイパ橋】 蛇口からのフェリーはマカオとタイパを結ぶ3本の橋をくぐり、マカオタワーの前を通り抜け、中国の珠海に面した埠頭に着岸する。 フェリーはカジノホテル群の前を通り抜けて高架橋をくぐる。そして緑豊かな小高い丘に教会が見えてくる。漁船や貨物船が多く係留されている中をゆっくり進み、ターミナルに到着する。 下船の際も乗客は出口に殺到する。イミグレーションは単純で、改札のようなところで行われている。入国手続きまでに行列を20分ほど待った。 ターミナルの外ではマカオの旅行社のガイドとバスが待っていた。涼しいバスに乗り込み、全員が揃うのを待つ。車窓からは道路を車が行き交う姿が見られる。ここも左側通行だ。このあたりの建物は古く、先ほどフェリーの中から見た近代的なビル群とは対照的だ。 マカオで最初に向かったのは昼食で、どこかのホテルのレストランに入った。メニューは中華料理ではなくポルトガル料理だった。海外旅行では中華料理ばかり食べているので、ナイフとフォークを使って食事をするのは新鮮な感じだ。 【ウィン・マカオ】 2006年9月開業の米資本のホテル。カジノの卓数がマカオ一だという。 http://www.wynnmacau.com/ 食後は、マカオで一番大きいと言われるカジノへ。テレビやガイドブックで紹介されているカジノだが、駐車場が裏手にあったので、裏口から入ることになった。正面から入ったらその豪華さに驚いたことだろうが、裏手のエスカレータを登ると、ファーストフードの店がありその奥がカジノフロアだった。スロットやルーレット、大小など数多くの卓が並び、どの卓も盛況であった。客は中国人が多いようだ。世界一の売り上げも華僑を中心とした中国人が貢献しているのだろうか。 カジノの滞在時間は30分ほどあった。参加する気はなかったので、フロアを歩き回って見学するだけだった。しかしツアー客の中にはわずかな時間で数千ドル(マカオ$)も稼いでいる強者もいた。カジノの中は撮影禁止のため写真は無い。 カジノ見学が終わり、さてバスで出発という段で、また例の婆さんが行方不明になっている。どうやらトイレで転んで頭から出血し、医務室に運ばれたらしい。小一時間待ったところで、その婆さんは病院送りとなり、ガイドが戻ってきてバスは出発した。婆さんのケガ自体はたいしたことはなく、マカオを発つときに合流することになる。 バスは媽閣廟へ。1553年にポルトガル人が最初に上陸したのがこの地であった。その後ポルトガル人は定住することになるのだが、寺院が祀る女神「阿媽」の名にちなんで、この場所を“アマガオ”(阿媽の湾)と呼ぶようになり、それがマカオと呼ばれるようになったそうだ。ちなみに日本に鉄砲を伝えたポルトガル人が種子島に上陸したのは1543年のことなので、それよりあとの時代のことである。 【媽閣廟】 マカオ最古の中国寺院。明朝の初期に福建省の漁民によって建てられたらしい。世界遺産に指定されている。 バスを降り媽閣廟まで歩くが、途中線香を売る店が一軒だけある。日本では考えられないような身長ほどもある線香から、箸程度のものまで様々である。大きいものはその分高いのだろうが、それだけ効果も高いのだろう。 媽閣廟はバラの丘(媽閣山)のふもとにあるので、廟の中にある石段を登ってみた。丘の上からの眺望を期待したが、途中行き止まりになっていてそれ以上上へ行くことはできなかった。しかし、その到達点からは湾を見下ろすことができた。その奥にはまだ開発が進んでいない陸地が見えた。丘から降りて、廟の前にある売店で缶ビール(7$)を買って飲む。 【ゴミ捨ては罰金】 「マカオへようこそ、街を綺麗に」と書かれている。ゴミやたばこの吸い殻を捨てたり、道にタンやつばを吐くと600j(約10000円)の罰金だそうだ。街の至る所で公共マナー違反に対する罰則が明記されている。日本でもこれくらい徹底的にやってほしいものだ。 バスに乗り街の中心地に戻る。お約束のお土産屋(宝石店)へ立ち寄ったあと、いよいよ世界遺産の建築物見学である。人通りの多い商店街の路地をぞろぞろと歩く。左右には雑貨屋、衣料品店、果汁のジュース屋など興味深い店が建ち並んでいる。それらは見るだけで前に進む。やがて噴水のある広場に出る。ポルトガル統治時代の美しい町並みが取り囲む、有名なセナド広場である。広場は観光客で埋め尽くされている。ここで30分ほど自由時間となったが、迷子になると困るというので、聖ポール天主堂跡まではガイドが連れて行ってくれた。 マカオで世界文化遺産に指定されているのは、22の歴史的建築物と8カ所の広場を含む歴史市街地区となっている。このあたりだけでも、セナド広場そのものと、民政総署、仁慈堂、聖ドミンゴ教会、そして聖ポール天主堂跡があげられる。 世界遺産と土産物屋、ファーストフード店などが並ぶ路地を歩いていると、目の前に突如として巨大なファサードが見えてくる。ファサードの背後には青空が広がり、板のように立っている姿が異様だ。ファサードの前には広い階段があり、多くの観光客が座って休んだり、写真に写るためにポーズをとったりしている。 【聖ポール天主堂跡】 17世紀初頭に20年の歳月をかけイエスズ会が建てた天主堂だが、1835年の火事で現在のファサードを残して消失している。 ファサードの裏手から二階部分に登ることができる。また、地下納骨堂や博物館がある。 【壮麗なファサード】 長崎を追われた日本人キリシタンも当時建設に携わったという。 ファサードの下を通り抜けて裏側に回ろうとすると、閉館時間が近いのか警備員によって入場を阻止されてしまった。恰幅のいい女性の警備員だったが、しばらく交渉すると渋々中に入れてくれた。170年ほど前に消失したという聖ポール天主堂だが、その後再建されることはなく、唯一残ったファサードの裏側には博物館と地下納骨堂がある。時間がなかったのでそれらは見学せずに、ファサードの二階に続く階段を上った。ファサード二階の窓のさんには多数のコインが置かれ、窓からはビルで埋め尽くされたマカオの町並みが一望できた。なかでも建設中のグランドリスボアは特に目立ち、完成前からすでにマカオのランドマークとなっている。 【セナド広場】 日が落ちるとライトアップされて美しさが増す。 夕食はセナド広場のレストランに入り、中華の広東料理を食べる。食事を終えてセナド広場に出ると日が落ちて夕暮れとなっていた。広場には照明がともり、昼間とは違う光景が見られた。果物屋でマンゴーを買おうとしたが、一人で食べるにはでかすぎるので、ライチを買った。10ドルで結構な量があった。 バスに乗り、ここからはオプションでマカオタワーへ。徴収料金は80ドルだった。珍しくピンハネはなく実際の料金と同じだった。 マカオタワーの入り口は手前の建物から地下を通って入ることになる。その建物は複合施設になっていて、各種売店や、映画館、イベント施設、会議場がある。映画は、ハリーポッターが上映中だった。 エレベーターに乗り、一気に地上233mの展望室へ。時間は八時少し前ですでに外は暗く、夜景を鑑賞するために展望室内の照明は落ちていた。我々以外の観光客はまばらで、静かな雰囲気でマカオの夜景を楽しむことができた。 【マカオタワーからの夜景】 日が落ちるとライトアップされて美しさが増す。 マカオタワーのホームページ(音が出る) http://www.macautower.com.mo/eng/tower/index.asp この日泊まるホテルはタイパ島にある、皇庭海景酒店(Pousada Marina Infante)。四つ星の新しいホテルで、ホテルの中にもカジノがあるようだ。チェックインの後、ホテルの周りを散策したが、埋め立て地にあるこのホテルは真っ先に開業したようで、他には何もない。目の前にはコンクリートがむき出しの建設中の大型施設(ギャラクシー・メガ・リゾート)があるだけで、空き地が広がっている。遠くにカジノビルの光が見えたのでそこまで歩いていった。 そのカジノは金都酒店というカジノ併設ホテルで入り口で手荷物検査を受け、カジノフロアへ入ってみた。フロアは昼間のカジノほど広くはないが、一通りのゲームは揃っているようだ。しかし、客のついていない卓が多く、閑散とした感じであった。フロアを一巡して外に出た。遙か遠くに明るいビルが見えたが、そこまで行くには時間がかかりそうなので、ホテルへ戻った。 ホテルの売店でビールを買い込み同じツアーの仲間の一人と部屋に戻り、ライチを食べながら雑談した。今回のツアーはとかく海外旅行経験者(VIP向けのツアーらしい)が多く、余暇を楽しんでいる人が多い。今回部屋で話をした方も例外ではなく、ヨーロッパなども良く行っているようだ。決して金持ちではなく、こつこつお金を貯めては一人(既婚者だが)で出かけているようだ。面白いのは、写真は一切撮らない、お土産は一切買わないということだった。旅行で残るのは思い出だけということになる。それも一つの旅行の楽しみ方と言うことだろう。 続きCamera:Panasonic DMC-FX9,Canon EOS 10D
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