中国見聞録シリーズ上海放浪記2007 |
【四日目】
上海四日目の朝、この日も雨が降りそうな雲行きだった。とりあえず朝食を終えた時点で雨は降っていない。今回の旅行でやっておかねばならないことのひとつに浦東の夜景を撮ることがあったのだがまだ果たせていない。昨夜は雨のため、その前の日は朱家角から帰ってきて時間が遅かったためである。一般的に夜景を撮るのは日没の10分ほど前から30分後までで、空がまだ青黒いうちに撮る必要があった。空が漆黒ではきれいな夜景にはならないのである。 夜の下見というわけではないけれど、朝から浦東の方へ行くことにした。ホテルを出て四川中路から南京東路に出て外灘の方へ向かう。途中、和平飯店(ホテル)が改装のためだろうか閉鎖されていた。正面には鉄の門が閉まっているが、営業中なら閉じることのない門が準備されていたのが不思議だ。24時間営業のコンビニにシャッターが取り付けられているようなものだ。外灘の大通りは横断することができないので、地下道から黄浦江沿いの遊歩道に出る。 【人民英雄記念塔】 外灘の遊歩道の最も北にある。このあたりは黄浦公園となっている。1868年に開園したときは「犬と中国人は入るべからず」の看板があったことで有名。夜間は閉鎖となるため、ここからの夜景は見ることができない。 外灘遊歩道をゆっくりと南に歩いていると、これまで傘をさすまでもなかった小雨が一気に土砂降りとなった。すぐに折りたたみ傘を開いて自分が濡れることよりもカメラを保護したのだが、まわりの観光客は傘を持っていない人が多いようで、あっという間にどこかへ避難するため去っていった。それでも中にはずぶ濡れになりながらも悠然と歩いている欧米系の観光客もいた。 雨が降っていることもあり、外灘から見た浦東の高層ビル街は雲に覆われよく見えない。写真を撮るどころではなかった。しかし外灘の方のクラシックな石造ビル群は雲に達するほど高くはなく、よく見えている。 【外灘】 緑のとんがりお屋根が和平飯店。右に中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行、外貿大楼、中国光大銀行と続く。 遊歩道の南下を続け、そろそろ東金線の船着き場があるはずだが、見つけることができない。中国ではシステムやあるべきものが簡単にすぐなくなるので、あまりこだわらない方がいい。さらに南の東東線の船着き場まで歩くことにした。 遊歩道をいったん降りて、工事現場の仮設壁に囲まれた狭い通路を通り抜けて歩いていく。手には上海市の地図を握っている。東門道を東に行くと船着き場が見えて来た。ちょうどフェリーは着岸していて、自転車やバイクごと乗り込もうとする人が何人もいる。 東東線は黄浦江両岸を往復するフェリーで、一般市民の生活の手段となっている。そのため料金は激安の5角となっている。5角と言えば1RMBの半分で、日本円だと7円ほどである。卒倒しそうな安さである。観光客向けの遊覧船に乗るとその100倍以上の料金を取られるので、貧乏旅行にはこの東東線を使わない手はない。 售票処でチケット代わりのゲームコインのようなプラスチックのトークンを購入する。5角というのは半端な料金だが、使い道のない1角コインが大量に余っていたので、それを使って支払う。そのトークンは售票処すぐ先の箱の中に放り込んで、乗船する。ここでは、交通カードも使えたようだ。常連客はいちいちトークンを買うことなく交通カードで入場している。 このフェリーの特徴は安さだけではなく、椅子がない!ということである。渡航時間はわずか数分だが、ラッシュ時にはすし詰めになるくらい混むのだろう。座席のない山手線のようなものだ。
渡航はわずか10分。座席に座らなくても苦にはならない。高層ビルが建ち並ぶ浦東に上陸し、フェリーから下りた数十人は思い思いの場所へ散っていく。行く当てもない自分はとりあえず、外灘で南下しすぎているので、北の方へ上っていくことにした。浦東のランドマークである東方明珠塔や地下鉄駅はずっと北の方にあるのだ。しばらく車道に沿って歩いていくと、途中で黄浦江側の遊歩道に入る道がある。 今度は浦東側の遊歩道から外灘のビル群を眺めることになる。こちら側の遊歩道はまだ整備中で、雨の中作業員が煉瓦を敷き詰める作業を行っていた。 東方明珠塔が近くなり、メインストリートの方へ歩いていくと巨大な二棟のビルが見えてくる。手前が金茂大廈で奥が上海ヒルズこと上海環球金融中心である。いずれのビルも上半分は雲の中に隠れている。 【摩天楼は雲の中】 2007年9月14日にビルの骨格部分となる最上部の支柱が固定され、森ビルの社長が記者会見を行った様子がニュースで流れたが、今回訪れたのはその9日後だった。 このビルは1平方b、1日あたり3米ドルでフロアが賃貸されるという。総工費は1250億円で、日本の横浜ランドマークタワーの総工費が2700億円なので、日本のビル投資と比べるとかなり安上がりなビルと言えるようだ。 ついでに書くと、79階から93階には6ッ星級のホテルであるパークハイアット上海が入る予定で、こちらは2008年7月開業というからビル自体もそのころ開業するのだろう。 そんな未来の高層ビルに興味があり訪れた浦東ではあったが、雨で高層ビル群の鑑賞もままならないので撤退することにした。地下鉄陸家嘴駅から人民広場駅へ移動し、上海博物館へ向かった。 【上海博物館】 丸い天と四角い大地を模した「天円地方」を表した造りになっている。故宮博物院、南京博物館とともに中国三大博物館のひとつ。 開館:9:00〜17:00 料金:20RMB URL:www.shanghaimuseum.net(音が出るので注意) 上海博物館は何度も来ているが、このような施設は何度来ても退屈しない。しかも今回は館内でプラド美術館展が行われていた。追加料金は必要なく、博物館の入場券ではいることができた。この美術館展だけは撮影禁止となっている。博物館の常設展は外国人が多いが、こちらの美術館展は中国人も多く鑑賞しているのでかなり混雑していた。展示物はガラスや柵などなく、直に触れそうになるくらい接近して見ることができる。この混雑の中作品は大丈夫なのだろうかと心配になる。 2007年は中国でのスペイン年であることからこの企画展は開催されたらしい。エル・グレコの作品など一級品もあり、思わぬ絵画を鑑賞することができた。
次に向かったのは南京東路の「上海第一食品店」ここは量り売りで、お菓子や乾物が売られていて、値段も人民向けなので激安である。日本へのお土産はここで調達することにしている。この時期は小さな月餅が種類豊富に売られていた。その月餅を2種類とクコの実、手羽の真空パックなどを買い込んだ。店の奥まで行きもっと物色したかったが、かなり混雑しており、早々に退却した。 いったんホテルに戻り、濡れた服を着替えてしばらく休憩。夕方になるといよいよ夜景の撮影に出発した。 蘇州河が黄浦江に合流するところに外白渡橋という古い鉄橋がある。1856年にイギリス人によって架けられたもので、名前は「外国人はただで渡れる」という意味。中国人は金を払わなければ渡れなかったという時代もあったようだ。その橋のすぐ隣にはロシア領事館がある。
【MI-3の現場】 トムクルーズがビルからビルへ飛び移り、傾斜した天窓を滑り落ちるシーンがあった。真ん中のビルがそのビルである。 黄浦江では観光客に向けて広告船が行き来している。船に巨大なテレビスクリーンを乗せて大音響で様々な商品のコマーシャルを流している。しかしその割には外灘の地上広告の照明は消えているものが多い。真夏であれば、電力不足で照明を落とすと言うこともあったようだが、この時期に照明を点けないのはどういう事だろう。空は十分に暗くなっている。 浦東側の照明も点かずに、まわりのカメラマン達はあきらめて去り始めた。そしてかなり暗くなってから、ようやく外灘側の洋風建築に照明が点きだしたので、場所を変えてそちらの方を撮ることにした。 【外灘の夜景】 左から亜細亜大楼、東風飯店、外灘三号、外灘五号、外灘六号、バンコク銀行。
結局照明は全開と言うことはなかったが、一応の写真は撮れたので満足である。外白渡橋を渡ってホテルへ戻った。 続きCamera:Panasonic DMC-FX9,Canon EOS 10D
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